2011年10月09日

閉じこもりきりの生活

ここ南ダルフール州のニアラに赴任して2年経とうとしている。近頃はもっぱら次の赴任先であるローマの下調べをして時間を過ごしているが、それ以外は特にすることがなく、本を読んだり、ネット閲覧したりのインドア生活だ。ダルフールは未だ紛争地の扱いで、ここへ渡航してくることは、治安の問題から、国連職員やNGO職員でもない限り困難な場所だ(そもそもこんな所にそれ以外の目的で来る意味がない)。そのため、徒歩での外出は一切禁止で事務所まではわずか500メートルほどの距離なのに、シャトルバスでの移動。しかも、門限は夕方5時と決められているので、監獄にいるような閉じ込められた暮らしぶりだと言える。

日々の生活は、宿泊先のゲストハウスと事務所の往復、幸いなことに、私の仕事では空港へ行くこともあるから、まだ辛うじてマシな方だと思う。昼ご飯を買いに、近くのレストランに行くこともあるが、なるべくなら自分で行きたくない。それよりもドライバーに買いに行かせることのほうが多い。仕事が忙しくて時間が取れないわけでもなく、治安状況が心配だからでもなく、その他の理由で行かないのだ。

スーダン人には、列に並んで待つなんてお行儀のいい習慣はない。たかがサンドイッチを買うだけでも、割り込んでくる人をブロックしながら、注文を受ける人の眼前に紙幣を掲げ、かなり強引な態度で注文しないとほかの人たちに先を越される。これにはやたらと疲れる。それに、正直なところ、料理を作っているところをあまり見たくない。見ると、とても不衛生に思えてしまい、食欲が一気に減退する。発展途上国での生活は、このスーダンが初めてではなく、自分自身では慣れている身と思っているが、こういうのは、長期滞在するとボディーブローのように効いてきて、かなり疲弊する。

教育をきちんと受けていないし、そういう習慣ではないのだから、「郷に入れば郷に従え」的感覚で、生きていくしかない。それに人々も悪気があってそのような行動をとっているのではない。まだ来たばかりの人は、これくらいなら大丈夫、という。私もそうだった、1年ほど前までは。でも、半年を過ぎ、1年を過ぎてくると、これは本当に精神衛生上よくない。なるべく、自分から地雷原には近寄らないようにしている。「はぁ」と溜息がでて、嫌な気分になるからだ。人々の習慣は、そんな簡単に変えることはできないし、みんながそうであるから、自分もそう行動するのだ。

治安が良くて、もう少し自由があって、休日なんかには市場などをブラブラできたら、どれほどここでの生活は楽になるだろうと思う。おそらく、アジア人の私は、街を徘徊していても、危険はないものと思うけど、国連職員であるため、UNDSSという治安を扱う機関の出す規則にはやはり従わなければならない。この安全規則を破ってまで、散歩するほどの魅力は残念ながらないし、少しでもリスクがあるなら安全パイを取るべきだ。しかし、こうインドアだと活力がそもそもわかないし、はっきり言って、このニアラという町を知る機会が皆無なのだ。

これまでの人生で、異国の土地に長期滞在しておきながら、これほど知らない街はない。そういう点においては、とても貴重な体験だがこんなことは繰り返すべきことでもないし、ましてや人には勧められない。この想いは、ここに実際に長期滞在した人でないと共有できない。家族に話したところで、大変ねぇ、可愛そうに、大丈夫、くらいの返答しかないから、近頃は話さなくなってきている。

ダルフールについてのネタが乏しいのは、この地でブログを続けている私自身、ツライところだ。しかし、これほど活動が制限されていては、致し方ない。人生山あり、谷あり。昔、部活の顧問が言っていた言葉を思い出す。「止まない雨はない」、「終わりのない坂はない」。これが雨であり、間もなく晴れるだろうことはわかっているが、その晴れを万感の思いで、共有できる人はおそらく家族にもいない。

ここは、出稼ぎ労働者の集う土地なのだ。そして、働く場は、マグロ漁船のような広い場でありながらも閉じ込められた空間なのだ。そんな比喩表現がぴったりだと思う。まもなく、私のお勤めは終焉となり、ようやく娑婆に解放されるが、この残日数のカウントダウンがとてもじれったい。
posted by atsushi at 04:36| Comment(0) | スーダン生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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