2011年10月11日

ゲーム理論

ちょっと趣向を変えて、読んだ書籍についての所感を書いてみたいと思う。読書後の感想をこの場で共有することによって、いくつかの利点がある。本をダラダラと読まなくなり、しっかりと人に伝達できるように自分の中で要約する能力が身につくこと。ブログの読者と、その本の内容について議論する場ができること(このブログはそれ程人気があるわけではないので、ただの独り言になる可能性が大だが)。他にもっと面白い本と出会うきっかけになるかもしれないということ。そして今回は、このテーマ第1弾。

日常生活に潜むゲーム理論 [単行本] / レン・フィッシャー (著); 松浦俊輔 (翻訳); ...

どういった経緯でこの言葉を知ることになったか今では思い出せないが、ゲーム理論という言葉は、今まで読んできた雑誌や書籍なんかで時々目にしてきた単語だった。なんとなく面白そうという気まぐれで購入した本だったが、これが社会生活の中で、人の行動原理や心理現象なんかを表し、さらにはもっと大きな政治的動き、経済学なんかも紐解けるものだというのは、目からウロコだった。

ゲーム理論の理解としては基本的に数学の理論であって、戦略を練るときに使える考え方だ。しかもこの理論の研究者5人はこれでノーベル賞を取っている。ノーベル賞については、日本人が受賞したものに対しては関心を持つけど、他の国の人が受賞したものにまで関心が及ばない。話が少し脱線するが、世の中に起こっていることを、本当に理解するのは難しいと思うのと同時に、いったいどうすれば理解できるような環境を作れるのだろう。そんなことをふと思う。

ゲーム理論への理解のため、代表的な話「共有地の悲劇」という話しを紹介する。

ある放牧民の集団があり、その中の一人が群れの家畜を一頭増やそうとする。増やせば相当の利益が上がるし、一頭だけ増えるくらいなら土地全体の草の回復力を減らすのもわずかなもの。よって、彼にとっては理にかなっている。しかし、他の者も同じように考えると、そこに悲劇が生まれる。みんなが自分のわずかな利益を上げようと考えると、草が食べられる量が多くなりすぎて、回復に間に合わず、その土地は牧草地として適さなくなってしまう。結果的に、そこでの放牧はできなくなってしまい、業務が成り立たなくなり、最悪の場合は餌が消滅し、全ての家畜は死んでしまう。それぞれの合理的行動は、最終的に、非合理な結果をもたらしてしまうというジレンマだ。

さらに、似たような例として、事務所のスプーンの話も挙げられていた。これについては、全く同じ現象を私自身が経験しているので、面白かった。内容としては、共有のスプーンを置いておくと、いつの間にかそのスプーン全てがなくなってしまう話だ。事務所の構成員一人一人が、自分の利便性を上げるため、スプーンを一つ持って行ってしまう。たくさんあるからいいだろうと思い、こういう行動に出る。しかし、これを多くの人が同じように考えると、スプーンはなくなってしまうのだ。そして、今まで私は、スタッフ用と来客用に20本ほどのスプーンを購入したが、半年も経たないうちに残り1本となり、今ではその1本を4人のスタッフでシェアしている。笑ってしまう現実だが、この本を読んで謎解きができ、少しすっきりした。なるほど、スプーンは消える運命にあったのだ。

ただこの現象を地球規模の資源(「石油」「森林」「魚」など)に当てはめてみると、恐ろしく思う。全体の中で、自己の利益を図ろうとすると、どういうわけか最終的に自己の利益を全く図れない状況に陥ってしまう。資源をめぐる紛争は、こんな感じで始まるのだろう。もちろんここダルフールの元々の紛争原因である遊牧民たちの牧草地の獲得合戦は、これで説明がつく。資源をめぐっての紛争は、今後も絶えることはないだろうし、紛争自体も自分たちが勝った後にやめようと、その参加者各々が考えていれば永久に破壊行為は継続される。

この本の目的は、ゲーム理論の紹介だけではなく、これを使うことによってどうやってこの手の問題に直面した時、お互いの利益が守れるのかということを掘り下げている。ただ、正直なところ、数学者の書いている書籍であるため、条件付けがやや複雑なのと、まどろっこしい説明で実は未だ頭の中で消化できていない。

しかし筆者は、自己の利益を追求するという合理的取組は、自己の利益がゼロになるという道程の途中にあるような否定的な面だけでとらえるべきではないと言っている。その参加者が協調することによって、各個人の利益は伸びなくとも、全体の利益を守ることができ、結果的に自分に戻ってくることは可能だ、と言っている。そこで私は、芥川龍之介の作品のひとつ「蜘蛛の糸」を思い出す。考えてみれば、あの話はゲーム理論なのかもしれない。釈迦が垂らした極楽につながる糸を、みんなで協調して登れば、自分もそしてその他の人も同時にその恩恵を受けることができたのかもしれない。「掴まるな、上ってくるな」と言わなければ、糸は自分の直ぐ上で切れなかったかもしれない。

それから、「なるほど」と思った解決法について一つ紹介する。

あるものを2人もしくわ2グループで分けるときの争いを未然に防ぐ分け方。

「こちらが分けるからそちらが選べ」戦略だ。Aさんが、分配の主導権を握って、配分を決めたとしても、Bさんのほうが先に選べるということにすれば、Aさんは必然的に公平に分けようとする。そうしないと、自分が損をするからだ。自分に子供が2人できて、お菓子の分配や、お手伝いの配分を決めるときに喧嘩していたら、この方法を使おうと考えた。これなら喧嘩は回避できるし、お互いハッピーになれるのではないかな。

ゲーム理論、興味持った方はちょっと勉強してみてください。人生で迷ったときなんかに使えるかもしれないですよ。ちなみに、ノーベル賞を受賞した5人の研究者は、いずれもアメリカ国防省ペンタゴンでの勤務歴があるようです。戦略家になれるということだろうか。

日常生活に潜むゲーム理論 [単行本] / レン・フィッシャー (著); 松浦俊輔 (翻訳); 日経BP社 (刊)
posted by atsushi at 23:36| Comment(0) | 読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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