2011年10月24日

ドル漂流

読書紹介第2弾。榊原英資(さかきばらえいすけ)氏の「ドル漂流」

ドル漂流 [単行本] / 榊原 英資 (著); 朝日新聞出版 (刊)

朝日新聞出版から2010年5月に出されたハードカバーの本。この本は、2011年の「日本の論点」でどなたかが紹介していて(もしかすると本人かも知れない)、面白いのではと思ってアマゾンで購入しておいた本だ。育児休暇の際、時間があって本を読むだろうと思い、帰国に合わせて20冊ほど気になる本を買っておいたそのうちの一冊であった。子供が生まれてからは予想に反して時間はなく、赤ちゃんにつきっきりの生活は、読書の時間もまともにとれず結局はスーダンに持ってきてしまっていた。

さて、僕の最近の興味は経済だ。大学では経済を学んだことはなかったが、個人的には常に興味があり、時々その手の本に目を通していた。特に今までは、資産を増やすハウツー本、会社を経営するための知識本等を好んで読んできたが、最近自分自身でその趣向に変化が表れてきているのを感じる。それは、政治への興味が大きくなってきて、マクロ経済学や国家・国際上の経済の動きに関心がいくようになってきたからだ。当然そのミクロ・マクロ的考えは関連しているものであるけど、マクロ経済学は自分自身とても敷居が高いと思っていたのと、なんだかとても難しそうという思いから敬遠してきたというのが本音なのだ。

ちょっと遠回りしてしまったが、榊原英資氏は、知っている方も多いのだろうけど、東大卒の元旧大蔵官僚で米ミシガン大で博士号を取り、IMFにも勤めたことがあり、財務官まで登りつめた経済界の偉い方なのだ。当時「ミスター円」と呼ばれており、退官後はいくつかの大学で教鞭をとっておられ、現在は青山学院大学の教授をされている。そんな人の本だから、興味はあって購入したものの、難しいことばかり書いてあるのだろうなぁ、チンプンカンプンの公式が並んでいるのだろうなぁ、読み終わるまでに数か月もしくは終わらないかもしれないなぁと恐怖心を抱きながら読み始めた。

しかし実際は2日で読み終わった。これには読んだ本人が一番驚いた。結構な厚みの本だし、休日というわけでなく平日読んでいたのだが、あっという間に読み終えた。難しい箇所もあったが、リズムが良く、まるで少年が漫画に見入るように睡眠時間を削ってまでも読み通してしまった。とても面白かったのだ。

内容は、国際基軸通貨米ドルの動きを話の中心に据えて進んでいくのだが、その周りにある歴史観、日本をはじめとするアジアに関する洞察がとても面白い。昨年までGDP世界第2位であった日本の通貨円が、どうして国際通貨になれないのか、いま現に危機が起こっているヨーロッパEuroの脆弱性を紐解きながら榊原氏の普段から思っていること、感じていることが書かれている。バリバリの経済本(私の中では数字と公式の拷問)ではなく、人類が生きていく中に起こる現象として、様々な出来事と結び付けて考えられており、経済はその歴史背景や社会的動きに先行したり、反応したりして動くいきものであるということが分かりやすく説明されている。

昔から思っていることだが、難しいことを分かりやすく説明できる人は、本当に頭のいい人なのだろうなぁと思う。思わず、読みながら何度もうなり、文章に蛍光ペンで線を引いていた。

内向き志向、ガラパゴス化現象、海外を敬遠する若者、これらは国内市場を重要視する国内企業の戦略とデフレに絡んだものであるということだが、リスクを取らなくなってきている日本のなれの果てをとても憂いているように感じられた。この人の目は世界を向いており、日本の国際社会での立ち位置をどうとるのか、どのような国になっていくべきなのかが示されている。そして、伸びゆく中国の若者、インドの若者を対比で扱いながら、今や国際言語となった英語を翻訳という視点から学ぶのではなく、言語を操る点に重点を置いて、学ぶべきだと警告している。

私が思う国際人にまた一人お会いした気がした。もう一回読み直そうと思う。そして、そのあとマクロ経済学を勉強しようと思う。
posted by atsushi at 04:39| Comment(0) | 読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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